犯罪抑止と犯罪防止は役割が違います
いま、「闇バイト」「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が関わる凶悪な侵入強盗事件が相次いで発生しています。
各地での重大な被害とともに、犯罪への大きな不安が広がっています。
一次的には、警察による指示役や組織の検挙こそが一番の防犯対策です。
一方、治安回復にあたり、防犯ボランティア(青パト含む)への期待も聞こえてきます。
ここで重要なことは、犯罪抑止と犯罪防止の違いを正しく理解することです。警察防犯による犯罪抑止(直接的防犯)と、市民防犯による犯罪防止(間接的防犯)とでは、担える部分や効果が異なります(図)。
市民防犯は、とくに自然監視と呼ばれるような「人の目を気にするタイプの犯罪行為」を防止する部分で力を発揮します。すなわち、犯罪等へ直接的に対応せず、姿を見せることで犯罪が実行しにくい環境=間接的に防犯力を発揮する領域でのみ力を発揮するのです。
ところで、「闇バイト」「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が関わる侵入強盗については、人の目を気にするタイプの侵入盗とはタイプが異なります。人の目を気にせず、被害宅をピンポイントで狙い、集団で手荒な手段で侵入しているようです。また、逃走時も強引な方法で逃げようとするはずです。
すなわち、市民防犯が担える領域を超えているのです。このあたりが整理されずに防犯ボランティアへの期待がアナウンスされてしまうと、防犯ボランティアが危険な状況に巻き込まれる、犯罪抑止=武装や過激な対応を行う「やりすぎ防犯」が生じるなどの大きなリスクをともない、体感治安はさらに悪化すると考えられます。
あくまでも、見守り(犯罪防止)の範囲での活動を行い、万が一、危険が想定される状況を目撃・遭遇した場合は、安全を確保の上、ただちに警察へ通報する…といった活動範囲を示すことが重要です。
一方、侵入強盗対策として防犯ボランティアが力を発揮できる分野としては「防犯啓発」があります。地域の中で、コミュニケーションを活かして防犯情報を伝えることです。
・玄関や勝手口のカギをかける
・窓の防犯対策を強化する
・チャイムが鳴っても、いきなりドアを開けない
・就寝時は携帯電話を近くに置いておく
・不穏な様子に気づいたら、見に行かずに通報する
・近所宅で異変を感じたら、すぐに通報する…など
所轄の警察と協働しながら、地域でメッセージを伝えることで、
①犯罪への免疫力が高まる
②安心感を広げる(体感治安の改善)などの効果が期待できます。
とくに警察や自治体等の関係機関におかれましては、十分な注意と配慮を行う中で防犯ボランティアとの協働・推進に取り組まれるよう、お願いいたします。
市民防犯インストラクター 武田信彦