地域やPTA、防犯ボランティア団体の皆さんによる防犯活動の意義や効果について、30年ちかく市民防犯一筋に歩む市民防犯インストラクター武田信彦が、分かりやすく解説します!
※ここで表現する「犯罪」とは、街頭犯罪のうち、自然監視の効果で犯罪防止効果を発揮しやすいものを指します。テロや通り魔など人の目を気にせずに実行するタイプの犯罪は除きます。
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市民防犯とは?!
市民防犯とは、一般市民ができる防犯のことです。いわば、一般市民が主役の防犯ともいえるかもしれません。
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市民防犯が扱う2つの領域
市民防犯には、「一般市民が地域で行う防犯(地域)」と「一般市民が自分を守る防犯(個人)」の2つの領域があります。日本では、どちらも原則として非武装・非暴力が前提となります。
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日本で育まれた地域の市民防犯
ここでは、「一般市民が地域で行う防犯」=地域の分野を解説します。日本の地域の中で丁寧に育まれてきた防犯ボランティア、見守り活動、PTAによる地域活動などの市民防犯にはどのような意義や効果があるのでしょうか。
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市民防犯の位置づけ
私は、警察による防犯を「警察防犯」と呼んでいます。警察防犯の大きな役割は、犯罪や非行と直接対峙する、「犯罪抑止」=力や権限を行使する強い防犯です。一方の市民防犯は、犯罪が起きにくい環境づくりとしての「犯罪防止」を目指します。犯罪や非行と直接対峙しないので間接的防犯とも呼んでいます。いま、両者は、地域の治安維持のパートナーと位置づけられています。
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連携と協働による地域防犯
「自分たちの街は、自分たちで守る!」ではなく、「自分たちの街は、みんなで守る!」が健全な地域防犯のあり方です。地域の防犯は、市民防犯だけが担うものではありません。一般市民とともに、警察や自治体、教育委員会等の関係機関との連携・協働が欠かせません。連携・協働の力を効果的に発揮するためには、それぞれの”得意技”を知ることが重要です(できること、できないこと)。とくに、市民防犯と連携・協働、支援を行う関係機関の皆さんは、市民防犯の正しい理解が不可欠なのです。
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市民防犯が目指すこと
私は、地域活動としての市民防犯が目指すことは、おもに2つあると考えています。①犯罪が起きにくい環境づくり、②助け合いの環境づくり。”環境づくり”がポイントです。人と人とが関わり合うような関係性づくりの中で安全な地域を目指します。その実践の形が、笑顔とあいさつの見守りです。
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市民防犯には優しさを忘れずに!
すなわち、市民防犯は、犯罪や非行と戦う活動ではありません。厳しい目で地域を監視する活動ではありません。地域や子どもたちへ目を向けて、優しい気持ちで見守りを行う防犯活動です。
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子どもの防犯対策が欠かせない!
とくに地域の市民防犯が効果を発揮するのが、子どもたちの防犯対策です。いま、日本では、①子どもだけになりやすい環境が広がり(子どもの環境)、②子どもを狙う悪意や犯意を持つ者がいつ・どこに現れるのかわかりません(犯罪被害リスク)。全国どこでも、子どもの防犯対策は待ったなし!の状況が続いています。
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子どもの犯罪被害の実態①
市民防犯インストラクター武田信彦も助言を務める、警察庁「犯罪被害等防止マニュアル」は、全国規模の犯罪被害実態調査を経て作成されました。13歳未満の小学生編では、犯罪被害が発生している場面が紹介されています。
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子どもの犯罪被害の実態②
警察庁は、特定の場所が危険!と示しているわけではありません。これらの場面を見て、「小学生の行動範囲の全てでは…」と気づくことができればベターです。
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犯罪が発生しやすい”瞬間”
最大のポイントは、「子どもだけの瞬間」「ひとりになる瞬間」に犯罪被害が発生しやすく、さらに被害が重大化しやすいということです。すなわち、「危険な場所」ではなく、「ひとりになる瞬間」にこそ注意が必要。さらに、地域の市民防犯はその瞬間を無くすこと、減らすことが大きな目的となるのです。
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子どもを守る3つの防犯力
犯罪被害が発生しやすい「子どもだけの瞬間」「ひとりになる瞬間」を地域の中から無くすこと、減らすことは、簡単ではありません。そのため、地域の力のみならず、保護者の力、子ども自身の力も欠かせません。「みんなで取り組む」視点が求められるのは、みんなの力を重ねわせることで防犯力が高まるからです。
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市民防犯の効果を高める=姿を見せる
「子どもだけの瞬間」「ひとりになる瞬間」を地域の中から無くすこと、減らすことにおいて、地域の市民防犯は大きな底力となるのです。姿を見せることにより、悪意・犯意をもつ者が近づけない安全バリアが生み出されます。また、子どもたちがピンチの場合、「助けて!」が届きやすい環境も生まれます。
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優しい気持ちで取り組もう!
姿を見せることを意識する、さらに、地域の人々や子どもたちへ笑顔やあいさつの見守りを行うことが、地域の市民防犯の最大の効果を生み出します。防犯活動を行う際は、穏やかな気持ちで取り組んでみてくださいね。
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防犯活動&見守りのコツ
カラフルなユニフォームは、「姿を見せる効果」を高めることにつながります。また、警察や自治体、学校やPTAから地域の情報を得るとパトロールのコースを決める際に役立ちます。繰り返しますが、見守りとコミュニケーションを大切に取り組みましょう。
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ご自身と仲間の安全を第一に
通学路の見守りを行う際は、イラストの様に十字路の角などで行うと効果的です。その際、背中側を埋めて安全を確保しましょう。仲間がいる際は、対角に立っていただくと、①お互いの安全確認、②見守りも行いやすくなり、さらに、③全方位に対して「姿を見せる効果」を広げることもできます。
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市民防犯が生み出す効果
私の経験上、地域における市民防犯が生み出す効果は、たくさんあります。①予防の効果:姿を見せることで犯罪が起きにくい環境を生み出します。②意識を高める効果:地域住民の皆さんへ防犯啓発を行うことで、犯罪に対する免疫力を高めることができます。③連携が育まれる効果:地域の中で活動することで、警察・自治体等の関係機関、学校・PTA、関係団体等とのつながりが生まれます。④安心が広がる効果:笑顔とあいさつを大切にする市民防犯は、安全のみならず、安心の輪を広げる効果も大きいのです!
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市民防犯が生み出す効果の範囲
一般市民による防犯活動の強みは「姿を見せる効果」です。すなわち、人がいることによって悪意・犯意が出しにくくなる犯罪、たとえば、街頭で発生する性犯罪やわいせつ、子どもを狙うタイプの犯罪を防ぐ効果が期待できます。一方、テロや通り魔など、人の目を気にしない、居合わせた人すべてを攻撃するような犯罪を防止する力にはなり得ないので「×」にしています。
また、侵入盗については、手荒な犯行も増えているため、無理な対応は危険をともないます。しかし、地域住民に対して「勝手口や窓のカギもかけて」「寝るときは携帯電話を近くに置いて」「敷地内で不審な音がしたら、確認に行かずにすぐに110番!」などの情報を伝えることで、犯罪への免疫力を高めることができるので「〇」にしています。
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見守りを行う際の注意点
とくに子どもの見守りを行う際は、注意も必要です。①過度な接触をしない、②飲食物をあげない、③私有地や車に入れない(保護する際をのぞく)。防犯活動を行う皆さんの善意が誤解されないことが重要です。さらに、悪意・犯意ある者が防犯活動を悪用して犯罪を実行することを防がなければいけません。
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防犯活動のスタイル
防犯活動のスタイルも多様化しています。従来型の防犯ボランティアをはじめ、通学路を専門に見守るスクールガード、青色回転灯を装着した青パト、子ども110番の家などの取り組みも広がっています。
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ライフスタイルに合わせて
そして、ライフスタイルに合わせて行う「ながら見守り」も広がっています。農作業や庭仕事、買い物やお出かけ、ウォーキングや愛犬の散歩、ジョギングの際などに地域や子どもたちへ目を向ける、意識を向けるような防犯活動です。一人ひとりの生活の中で無理なく取り組むことができます。「姿を見せること」「目や意識を向けること」が地域の安全を守る底力となるのです。
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市民防犯の強さは笑顔とあいさつ
市民防犯について理解いただけたでしょうか。優しさが出し合えるような、防犯を。コミュニケーションが生まれるような、防犯を。そして、人と人とがつながり合えるような、防犯を。それが、市民防犯の大きな強みです。これからの社会が直面する様々な場面でも、見守り・助け合いは地域の底力となるはずです。
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お読みいただき、ありがとうございました!
みなさまのご活動にぜひお役立てください。
市民防犯インストラクター武田信彦
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