市民防犯は、一般市民ができる防犯。一人ひとりができる「自分を守る力」を伝えることも専門領域です。街頭パトロールでの豊富な実践経験で身につけた知恵と技術をベースに、「一般市民の身の守り方」について、オリジナルの「逃げるワザ」プログラムをはじめ、著書やメディアにて発信を続けています。
ここでは、オトナの皆さんが実践できる防犯対策を紹介します。ぜひ、安全に暮らすためのヒントにしていただければと思います。
※紹介する警察庁の防犯コンテンツ、当方のイラストが女性の防犯視点となっていますが、防犯は性別を問わずに必要かつ重要なテーマです。関心をもつあらゆる皆様に役立てていただければと思います。
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悪意・犯意にコントロールされない
誰もが犯罪被害に遭わずに安全に暮らせる環境作りは、社会全体で取り組むべきことです。一方、ひとり一人が防犯意識や身を守るコツを発揮せざるを得ない状況もあります。防犯とは、悪意・犯意がある者に心身ともにコントロールされないことです。自らがもつ「自分を守る力」をあらためて確認してみましょう!
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ひとりになる瞬間に注意を
警察庁が全国規模の犯罪被害実態調査を経て、13歳以上の女性に関する防犯啓発コンテンツを公表しています。犯罪被害のほとんどが「ひとりになる瞬間」に発生しており、日ごろの生活エリアでも注意が必要です。
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ひとりになる瞬間に注意を
公共空間のみならず、集合住宅の共用部分や自宅周辺でも防犯対策を忘れずに。
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予防力を発揮する
歩き方を工夫すると、防犯力が高まります。早歩き&ときどき周囲へ目を向ける…と、危険を察知しやすくなり、コントロールされにくくなる抵抗力を生み出すことができます。歩きスマホは個人の自由ですが、周囲へ意識を向けた方が防犯力が向上するので、おすすめです。
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防犯ブザーを身につける
じつは、防犯ブザーって優れた道具なのです。大きな音で、①助けをもとめる、②逃げる時間を生み出すなどの効果が期待できます。
*注意:催涙スプレーやスタンガン等は加害リスクがあるため、防犯上の事情により持ち歩きたい場合は、所轄の警察署に相談することをおすすめします。
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自転車の利用時は…
なんと、日本で最も発生件数が多い犯罪(刑法犯)は、自転車盗です。短時間でもカギをかける、できれば2つ以上のカギをかけることをおすすめします。また、自転車で走行中は周囲を見ることができないため、悪意・犯意がある者に尾行されることにも注意が必要です。駐輪場に入る際は、必ず周囲を確認しましょう。
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自動車の利用時は…
コンビニに寄った際など、ついつい無施錠で車を離れることがあるかもしませんが、短時間でも必ずロックしましょう。また、ロックを解除する際や乗り降りする際も周囲へ意識を向けることがおすすめです。駐車場は悪意・犯意がある者が待ち伏せしやすい環境でもあります。防犯対策を忘れずに。
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集合住宅・自宅では…
ご自身が暮らす集合住宅や自宅周辺では安心感も生まれますが、室内からカギをかけるまで、防犯対策が欠かせません。とくに悪意・犯意がある者に尾行されてしまうと重大な被害が発生することもあります。玄関ドアを開ける際は、とくに後方を確認してから開けましょう。
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コントロールされない距離感
身を守る上で大切な距離感には2つあります。①身体的距離感。相手に触られない、つかまれない距離感を意識しましょう。②心理的距離感。脅される、騙されるなどして心をコントロールされぬよう、コミュニケーションを遮断する、きっぱり断る意識も忘れずに。
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助けをもとめる
助けをもとめることは、大切な護身術=身を守る方法です。ひとりでは対処できない場合もありますので、なるべく早く助けをもとめましょう。助けをもとめる際は、特定の人へメッセージを伝えることがポイントです。万が一、対応されなかった場合は、絶対に諦めずにSOSを発信し続けてください。
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すぐに通報する
110番…。なんだか心理的ハードルが高くなりますが、大丈夫です。オペレーターの指示に従って情報を伝えてください。とくに重要なのが「現在地」です。住所表記をはじめ、電柱や標識の管理番号を伝えることで現在地が分かる場合もあります。通報から警察官の到着まで7~8分はかかります。危険な状況を確認したときは、なるべく早めの通報が重要です。
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逃げるワザ(肩を組まれたとき)
肩を組まれる行為は、相手にコントロールされやすくリスクが高い状態です。逃げにくいだけでなく、首に手が回ると、ますます逃げることが困難になります。イラストのように、足と腰の「スイングする力」をつかって体勢を一気に変え、相手の背後へ移動することで、逃げる空間を確保しやすくなります。
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逃げるワザ(肩を組まれたとき、身長差あり)
同じく、肩を組まれるシチュエーションですが、相手が自分よりも背が高い場合は、イラストのように、後方へのステップを活かして体重移動することで「すり抜ける」ことができます。子どもにも有効な逃げるワザです。
*注意:手で相手の腰のあたりを押す動きもありますが、相当な負荷がかかりますので、練習では押さない、軽くそえる程度で行ってください。
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逃げるワザ(手首をつかまれたら)
このシチュエーションでは、対面の手でつかまれています。この場合は、両手をしっかり握り、足と腰をつかった後方への全力スイングで外すことができます。イメージとしては、バットのスイングの逆の動きです。相手の手が外れたら、一目散に逃げます。
*注意:自分の後方へ「両手パンチ」が飛んでいきますので、練習する際はとくに後方に気を付けてください。
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逃げるワザ(前から首をしめられたら)
とても危険なシチュエーションであり、逃げにくい状況です。片手で相手の両手の上に橋を渡し、逆の手を振り上げて後方に引いた足と腰のスイングで一気に体勢を崩して逃げる隙を生み出します。
*注意:相手は、両手を拘束された状態で体勢が崩れるので、頭から倒れることもあります。練習ではゆっくり動きを確認してください。
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逃げるワザ(後方からバッグをつかまれたら)
後方にいる相手から、肩掛けバッグの持ち手をつかまれたシチュエーションです。前後の「綱引き」では、相手以上の体力がもとめられます。このようなときは、前方への足の移動と腰のスイングで体勢を変えることがで逃げるチャンスを生み出すができます。
*注意:バッグの持ち手に相手の手が挟まり、手首が外側に曲がり強い負荷がかかる場合があるので、練習する際はゆっくり動きを確認してください。
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逃げるワザ(後から首をしめられたら)
極めて危険なシチュエーションです。軸足を決めたら、もう片方の足を後ろへクロス、手を挙げて…スタンバイ。一気に腰のスイングを行うことで、ワイパー効果で相手の両手を払いのけることができます。
*注意:動きを続けると、相手の両手を拘束することでき、その状態で相手に足払いをかけると後方へ転倒します。練習する際は十分に気を付けてください。
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逃げるワザ(後ろから羽交い絞めされたら)
完全に身体をコントロールされてしまったシチュエーションです。でも、逃げることができる可能性は十分にあります。軸足を決めたら、素早く逆の足を後方へクロス。両手を伸ばし、体を反らしながら、腰をスイングします。相手の手が外れたらすぐに逃げましょう。
*注意:羽交い絞めは、じつは両手が使えない相手がとても不利な状態です。思いっきりワザを行うと、相手は頭から地面へ倒されるほどの勢いがあります。練習する際は、相手の体勢を確認しながらゆっくりと行ってください。
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テロ・通り魔から身を守る
公共空間で突然発生するテロや通り魔などの突発的な暴力。極めて危険な状況だからこそ、日ごろからの心構えが重要です。ポイントは、①時間=すぐに気づく、行動する、②距離=離れる、近づかない、③防護=物をつかって身を守る。そして、たまたま居合わせた者同士で助け合う力=近助も、お互いの命を守る欠かせない力となります。
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防護と抵抗で身を守る
刃物による危険な行為が近くで発生した場合は、防護と抵抗で身を守ります。①防護=盾となる丈夫な物で、相手と自分の間に防護壁を設けて致命傷を負わないようにする。②抵抗=盾となる物が無い場合は、あらゆる物を使って、致命傷を負わないように抵抗する。鞄、上着、ベルト、雑誌、靴、のぼり旗、カラーコーン…など、身の回りにある物をすぐに手に取ることが重要。
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お読みいただき、ありがとうございました!
みなさまの防犯力向上、安全な暮らしのためにお役立てください。
市民防犯インストラクター武田信彦
※こちらについては、イラストの転載はできませんのでご了承ください。